随分昔から、カー用品店等でタイヤ交換時に「窒素ガスを入れますか?」と聞かれることがあります。
最初、「なぜ、窒素ガス?」と思う方が多かったのではないでしょうか?
そもそも、空気中の多くは窒素。
タイヤに窒素を入れる意味は何なのでしょうか?
大気中の窒素、酸素、二酸化炭素の割合
大気中の窒素(N2)の割合は約78%、酸素(O2)の割合は約21%、二酸化炭素(CO2)の割合は約0.03%。
大気中の成分 | 大気中の割合 |
窒素(N2) | 約78% |
酸素(O2) | 約21% |
二酸化炭素(CO2) | 約0.03% |
普通にタイヤに空気を入れるだけで、タイヤ内の窒素の割合は大雑把に「約8割」、酸素が「約2割」、二酸化炭素は「微量」なのです。
窒素、酸素、二酸化炭素の動的分子径
各分子は固有の大きさを持っています。気体の分子が大きいほどタイヤから漏れにくくなります。
大気中の窒素、酸素、二酸化炭素の大きさは次のとおり。
大気中の成分 | 動的分子径(nm) |
窒素(N2) | 0.364 |
酸素(O2) | 0.346 |
二酸化炭素(CO2) | 0.33 |
動的分子径が大きい気体ほど、タイヤから漏れにくくなる理屈。
ちなみに、動的分子径が一番小さい気体はヘリウム(He)。次に、水素(H2)。
気体 | 動的分子径(nm) |
ヘリウム(He) | 0.26 |
水素(H2) | 0.289 |
※1nm(ナノメートル)=0.000001mm
(出典)配管技術2012年8月
燃料電池車の燃料は水素。水素は漏れやすい気体のため、燃料電池車にはスペシャルなタンクが搭載されています。
水素に比べて、窒素と酸素、二酸化炭素の分子径は大きいと言えます。
そして、タイヤに充填する空気の中で二酸化炭素、酸素、窒素の順番でタイヤの外へ抜けにくくなると言えるかもしれません。
窒素ガスは抜けにくい?
タイヤメーカーや販売店のWebページによりますと、窒素ガスはタイヤ内部から外へ抜けにくい性質があるといった記事が見られます。
確かに窒素の動的分子径は大きく、ブリヂストンのオフィシャルサイトでは、タイヤに窒素ガスを充填することで抜けにくくなるデータが公開されています。
空気圧240kPaの195/65R15タイヤ(室温60℃)で100日放置すると、
・窒素ガスを充填したタイヤの空気圧変化
240kPa → 180kPa
・空気を充填したタイヤの空気圧変化
240kPa → 140kPa
(出典)ブリヂストン
窒素ガスでタイヤとホイールの劣化が進みにくい?
ネット上では、窒素ガスを充填することで、タイヤとホイールの劣化が進みにくくなるという記事が見られます。
確かに、空気中の酸素がゴム成分を劣化させるのは事実。
タイヤ内部の酸素が少なければ、それだけタイヤ内側のゴム劣化のスピードを遅くできるかもしれません。
しかし、タイヤの外側は24時間365日、酸素と接触しています。車が走行すればタイヤは熱を持ち、太陽の紫外線を浴びます。
そもそも、タイヤには劣化防止剤が配合されているため、それほど神経質になるほどのことでもないような気もします。
次に、ホイールは鉄チンでも、アルミホイールでも塗装されています。
鉄チンホイールは長期的には、塗装の劣化により錆びてくることはあります。また、チープなアルミホイールは塗装が弱いため、ホイールの表面が劣化してくることがあります。
ただ、窒素ガスの充填でホイール内部の劣化を遅らせることができるのか否かは、何とも微妙な話のようにも聞こえます。
タイヤに窒素ガスを充填するメリットとデメリット
メリット
フォーミュラ・マシーンや航空機のタイヤには、窒素ガスが充填されていることが知られています。
限界を極めるレースシーンではタイヤが高熱を帯びます。タイヤに窒素ガスを充填することで、タイヤ内部は水分の影響を受けなくなります。
そして、航空機のタイヤは着陸時、滑走路との摩擦力により発熱するため、火災原因ともなる酸素を含まない窒素ガスが充填されています。
一般公道を走る車のタイヤに窒素ガスを充填するメリットは大きく2つ。
・エアーが抜けにくくなる
・タイヤ内のホイール劣化予防
デメリット
カー用品店やタイヤ専門店でタイヤに窒素ガスを充填すると、1本あたり500円前後。タイヤ4本で2,000円前後の費用。
タイヤに窒素ガスを充填することでエアーが抜けにくくなっても、念のため、月に1回はエアーチェックしたいもの。
状況に応じて窒素ガスを補充するとなると、コスパの面でどのように感じるのかは、人それぞれの価値観次第でしょう。
まとめ
もし、あなたが窒素ガスの充填に興味があり、財布に余裕があれば、管理人はタイヤに窒素ガスを入れてみてもいいと思います。
年間走行距離が多く、頻繁に高速道路を走行するのであれば、窒素ガスを試してみる価値はあるでしょう。
あと、薄い低偏平タイヤほど、空気圧の低下が見た目では分かりにくいため、安全を取って窒素ガスを充填する考え方もあります。
もちろん窒素ガスの充填は必須ではなく、どちらかと言えば嗜好に近いもの。これはオーナーのタイヤに対する考え方次第と言えます。
窒素ガスフェチの方は、お好み次第でどうぞ!といったところでしょう。
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