1年を通して、自動車の燃費がいい季節は春と秋。
窓を開けると心地よい風が入ってくる季節はエアコンの使用頻度が少なく、燃費にプラスに作用します。もちろん、春の花粉症に悩む方はドアガラスを閉めて走行すると思いますけど。
そして、日本の夏は各地で猛暑日が続きます。地域によっては外気温が40℃超を記録することもあり、エアコンONで当然、燃費が悪化します。
その点、冬季はエアコンのA/CスイッチをOFFにすることが多く、エンジンはエアコンコンプレッサーの負荷を受けません。ところが、冬季はエアコン未使用でも、燃費が伸びない季節。
特に、エンジンの熱効率が高いハイブリッドカーはヒーターを機能させるためにエンジンの停止時間が短くなります。これが理由で冬季のハイブリッドカーは燃費が悪化します。
では、冬季に燃費が悪化する原因と対策をまとめてみたいと思います。
冬に燃費が悪化する原因
長い暖機時間
コールドスタート時、各センサーからの情報がECU(エンジンコントロールユニット)に伝わります。
外気温が低いと、インジェクターから濃いめの燃料が噴射されます。その時、燃料の噴射量は暖機運転後と比べて大雑把に約10倍ほど。
コールドスタート時の冷却水の温度は外気温に左右されるため、冬は水温が適正温度に達するまで時間を要します。
冬季は水温が適正温度に達するまで時間がかかるため、燃料が濃いリッチの状態が続きます。これが理由で冬季は燃費が悪化します。
タイヤの転がり抵抗の増大
外気温の低下とタイヤの転がり抵抗の関係
ゴムは外気温が低下すると硬化し、逆に外気温が上昇すると柔らかくなる性質があります。
身近な例として、冬季は散水用のゴムホースは硬くなり、夏季は柔らかくなります。
ホースリールでゴムホースを巻き取る際、冬季はゴムホースが硬くなるため巻き取り抵抗が増えます。一方、夏季はホースリールで簡単にゴムホースを巻き取ることができます。
タイヤも同様、外気温が低下すると、タイヤ全体が硬くなります。ゴムが硬くなると変形しにくくなり、タイヤが転がりにくくなります。
タイヤが転がりにくいということは、タイヤの転がり抵抗が増えていることになります。加速時や一定の車速で走行中、タイヤの転がり抵抗が増えることで燃費が悪化します。
外気温とタイヤの転がり抵抗の関係について、あまり語られていないかもしれません。タイヤの転がり抵抗は燃費と密接な関係があり、冬季はタイヤの硬化が原因による燃費悪化が無視できないのです。
スタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤは外気温が低い環境下でも、硬化しにくいゴムを採用しています。しかしスタッドレスのトレッドパターンの構造上、サマータイヤより転がり抵抗が大きくなります。
多くのドライバーはサマータイヤからスタッドレスタイヤへ履き替えることで、若干の燃費悪化を経験していることでしょう。
なお、ヨコハマのスタッドレスタイヤ、アイスガードシリーズは転がり抵抗を低減した技術が投入されています。あらゆる性能が求められるスタッドレスタイヤにも燃費という環境性能が与えられ、進化が窺えます。
高くなるオイル粘度
コールドスタート時、エンジンオイル、ATF、MT車のミッションオイル、デフオイルは外気温の影響を受けています。
コールドスタート時、外気温が低いほど各オイルの粘度が高まります。粘度が高くなれば当然、機械各部の摺動抵抗が増します。各部に熱が入るまで、オイル粘度が高いため燃費に影響を及ぼします。
1990年代までは一般的に「10W-30」といった粘度のエンジンオイルがよく使われていました。その後、「5W-30」や「0W-20」のような柔らかいエンジンオイルが純正指定されるようになりました。
今や燃費対策とコールドスタート時の暖機時間の短縮化のため、エコカーは「0W-20」や「0W-16」のような柔らかい粘度のエンジンオイルが純正指定されています。
また、Mobil 1™ FS X2 のような100%化学合成エンジンオイルはワイドレンジで粘度は5W-40。モービル1のような化学合成オイルは低温時から高温環境下まで、高いエンジン始動性と油膜の確保を両立しています。
まとめ
冬季のコールドスタート時、エンジンからトランスミッション、デフ、マフラーの触媒、各種オイル、タイヤまで各部が冷え切っています。各部に熱が入らないと本来の性能を発揮できないのが自動車。
冬季にチョイ乗りを繰り返すと、燃費が悪化しやすいのは致し方ありません。なるべくチョイ乗りを避けた方が燃費にも車にもプラスながら、車の使用環境は様々。
暖機運転
長い暖機運転は確実に燃費を悪化させます。暖機運転の方法については、ドライバーによって考え方に違いがあると思います。
暖機運転は必要最小限にし、ゆっくりスタートしながらの走行暖機によって各部に熱が入りやすくなります。
タイヤの空気圧
最低限、タイヤの空気圧に気を配り、TPOとドライバーの好みに応じて、指定空気圧より10~30kPaほど高めに設定することで安全性の確保と燃費対策にプラスと言えます。
[関連記事]