自動車やバイクの「暖機運転」という言葉は、もはや死語なのでしょうか?
かつて、キャブレーター仕様のバイクの場合、走行前に暖機運転が必要でした。
しかし、今やバイクもFインジェクションを採用し、暖機運転という言葉があまり、いや、ほとんど使われなくなっています。
もう、自動車やバイクにとって、暖機運転は不要なのでしょうか?それとも、少しは暖機が必要なのでしょうか?
ちなみに、ネットで「だんきうんてん」と検索すると、「暖機運転」と「暖気運転」の両方が表示されます。機械を暖めるという意味では「暖機運転」が正しい漢字表記。
メルセデス・ベンツの暖機運転
メルセデス・ベンツの暖機時間は日本車に比べて短い傾向があります。
メルセデスの直列4気筒エンジンの場合、夏季のエンジン始動直後、タコメーターは1,000rpm +αを表示し、1分ほどで1,000rpm未満に落ち着きます。
冬季でもコールドスタート後、数分でエンジン回転は1,000rpm未満に落ち着きます。
メルセデスの取扱説明書には「暖機運転は不要」と書かれています。ドイツは環境にシビアなお国柄ということもあり、暖機運転やアイドリングについては厳格。
今となっては、もはや自動車の暖機運転は不要なのでしょうか?それとも、自動車は機械である以上、長く付き合っていく上で少しは暖機運転が必要なのでしょうか?
長時間の暖機運転は無意味
今時、コールドスタート後、停車状態で5分から10分もの暖機運転は必要なのでしょうか?極寒の降雪地であっても、管理人は長々とした暖機運転には疑問を抱きます。
中には、水温計が動き出すまで暖機が必要という考えもあるようです。しかし、冬季のエンジンスタート後、アイドリング状態で水温計が動き出すまでかなり時間が必要です。
燃費悪化と毒ガスの問題
停車状態の暖機時間が長いほど、燃費が悪化します。そして、アイドリング状態では、触媒の熱がなかなか上がらないため、周囲に毒ガスをまき散らすことになります。
エンジンオイルの劣化
また、長い暖機運転によるアイドリングを繰り返すと、ピストンリングとシリンダー内壁の間から漏れるブローバイガスにより、エンジンオイルのガソリン希釈が進みます。よって、エンジンオイルの劣化が進みやすくなります。
カーボンの発生
コールドスタート時、インジェクターの燃料噴射量は大雑把に通常時の約10倍。エンジン始動時、インジェクターは非常に濃い燃料を噴射します。
エンジンが冷えていると、シリンダー内の燃焼が不安定。よって、ECUは濃い燃料を噴射するようにプログラムされています。
よって、停車状態の長い暖機運転の問題点として、シリンダー内にカーボンが発生しやすくなります。そのような暖機運転を繰り返していると、ピストンヘッドと燃焼室にカーボンが堆積しやすくなります。
かと言って、管理人は20代の頃、キャブのバイクを所有していたこともあり、エンジン始動後、いきなり発進するのは気が引けます。
というか、例えば、バイクの空冷単気筒エンジンの場合、チョークを引いて、しばらく暖機しないと走行できません。(※今やチョークという言葉も死語と化しています。)
水冷直列4気筒エンジンであっても、キャブ仕様のバイクは暖機が必要。
管理人は、そんな20代を送ってきたこともあり、コールドスタート後、いきなり勢いよく発進!なんてありえないのです。
寝起きのダッシュは無理
自動車のエンジンはアルミニウムと各種金属パーツの集合体である以上、コールドスタート時、エンジン内部の各パーツのクリアランスは大きめ。
例えば、クランクジャーナルとクランクピン、ピストンピンとピストン、ピストンリングとピストン、バルブクリアランス等々。
メルセデスAMG/Mercedes-AMGには、鍛造ピストン採用のモデルがあります。鍛造ピストンは鋳造ピストンより熱膨張が大きいため、冷間時のピストンクリアランスが大きめ。
鍛造ピストン採用のエンジンはコールドスタート時、ブローバイガスが若干多めなのかもしれません。
いずれにしても、エンジン内の各パーツ・クリアランスは水温が80℃以上で適正になるように設計されています。
日本車、輸入外車に関わらず、取扱説明書では「暖機運転は不要」と書かれています。そして、しばらく走行していない場合は「少々、暖機運転するように」といったニュアンスで書かれているだけ。
しかし、コールドスタート時、いきなりアクセルペダルを深く踏み込んで急加速し、エンジンに高負荷を与えるような操作は慎むべき。
コールドスタート直後、油温が低いままエンジンを高回転まで回すのは、あまりにもハイリスク。
もし、そのように手荒に扱っても、エンジンが壊れないように設計してあるようで、それはそれで凄い技術。しかし、そのような手荒に扱われているエンジンからは、将来的に異音が出やすくなります。
人間だって朝、「目が覚めて起き上がり、いきなり思いっきりダッシュ!」なんて無理な話・・・。もし、そんな事をすれば、筋肉を痛めるかアキレス腱を切るか、コケてケガをします。
暖機運転より走行暖機
コールドスタート時、エンジンオイルの油温が低く粘度が高め。化学合成オイルでも同様。
冬季の極寒時はエンジンオイルが固くなっているため、エンジン始動後、オイルが各部に行き渡るまで時間が必要。夏季であってもエンジン始動後、オイルが各部に行き渡るまで、少々時間が必要です。
走行暖機の一例
そこで、管理人は走行暖機運転が今の時代の暖機方法ではと思います。管理人の自宅周囲に坂道があるため、坂道を利用して走行暖機します。以下は、管理人流の走行暖機の方法。
【1】乗車後、シートベルトを締める。
【2】エンジン始動。
【3】ブレーキペダルを踏みながら「P」から「D」レンジに入れる。
【4】ブレーキペダルをリリース。
【5】自宅近くの坂道でブレーキコントロールしながらゆっくり下る。
【6】生活道路に出て交通の流れに乗る。
【2】のエンジンスタートから【6】まで3分ほど。この間、アクセルペダルを踏まない。
生活道路に合流する頃、エンジンオイルはエンジンの各部に行き渡っています。後は、水温計が適温の90℃前後を示すまで、エンジン回転を抑えながら普通に走行するだけ。
これにより、トランスミッション、デフ、触媒、マフラー、タイヤに熱が入っていきます。
管理人は長年、このような走行暖機が習慣になっています。
走行暖機ならば、駐車中の暖機が無いため、燃費の悪化を防ぐことができて環境にもプラス。近隣の方々に、臭い排気ガスで迷惑をかけることもありません。
出先での暖機運転
なお、出先の場所によっては坂道を利用できません。そのような場合、管理人は以下の暖機運転を行います。
夏季の暖機運転
エンジン始動後、暖機運転は「1分間」。
その後、シフトレバーを「D」に入れ、普通に走行するだけ。
冬季の暖機運転
エンジン始動後、暖機運転は「3分間」。
その後、シフトレバーを「D」に入れ、普通に走行するだけ。
立体駐車場や平置き駐車場における暖機運転
立体駐車場や平置き駐車場から出発する際、駐車場内をクリープで走行し、出口の精算機で清算している間に2分や3分が経過します。
そのようなシーンでは、エンジンスタート後にシフトレバーを「D」に入れてクリープで走行します。
道路に出たら、しばらくはエンジン回転を抑えながらゆっくり走行します。水温計が適温を示すようになってきたら、走行暖機はほぼ終了。
ちょっとした気遣い
管理人は長年、バイクや自動車と共に生活してきました。
いくら工作精度が高まり、エンジン内部の各パーツのクオリティと精度が向上しても、機械が冷えている時に無理な負荷を与える操作は慎むべきでしょう。
これは、10年、20年後の将来でも変わらないと思います。
今まで管理人は車両の暖機に少々気を使い、オイル管理を適切に行ってきました。愛車の走行距離が伸びても、エンジンから異音やメカトラブルの発生は一度もありません。
管理人の経験上、今までの愛車のアイドリング中のエンジン音はタクシー車両のように静かです。
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