日本に正規輸入されているメルセデス・ベンツのトランスミッションはAT(オートマチック・トランスミッション)とDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)。
伝統的にメルセデス・ベンツのATはタイトでシフトアップとダウンのタイミングが絶妙。
また、メルセデスのATは伝達効率がいいこともあり、エンジンパワーを効率良く路面に伝える完成度の高さが評価されています。
かねてより、メルセデスを含むAT車両のATF(オートマチックフルード)は定期的に交換すべきなのか?、それとも、交換不要なのか?意見が分かれます。
これは、一概には言えないと思います。
では、ATF交換の是非について深掘りしてみます。
メルセデス・ベンツのトランスミッション
かつて、2代目Aクラスと初代BクラスのトランスミッションはCVTが採用されていました。その後、3代目のAクラス、そして2代目のBクラスはDCTに変更されています。
今後、CセグメントのAとBクラス、そしてGLAは7速DCTを採用し、Dセグメント以上は多段式ATを採用していくものと思われます。
おそらく、メルセデスはCVTが抱えている諸問題に見切りをつけ、Cセグメントに7速DCTの採用を決めたのでしょう。
このように、メルセデス・ベンツでさえ、トランスミッションの選択に迷いがあったことが窺えます。
そして、21世紀の今日においても、各自動車メーカーはATの多段化を進め、同時進行でDCTの熟成を進めています。
このことからも、自動車用トランスミッションは未だ進化の途上にあると言えます。
メルセデス・ベンツ 7G-TRONIC/7速AT
メルセデス・ベンツ 7G-DCT/7速DCT
多段式ATと7速DCTの二大潮流
純粋にトランスミッションの伝達効率や信頼性、耐久性、重量、燃費、整備性を考慮すると、MT(マニュアル・トランスミッション)に勝るトランスミッションは存在しません。
MTの伝達効率は95%以上と言われます。
ドライバーがクラッチペダルを踏んでギヤを入れ、クラッチペダルから足を離せば、クランクシャフトからトランスミッション、プロペラシャフト、ドライブシャフトまでが直結状態になります。
当ブログの管理人ことMr.は、スポーツカーやスポーティーな車にはMTを残してほしいと思うものの、時代のトレンドはMT以外のトランスミッション。
欧州車やアメ車のみならず、トラックもダウンサイジング・エンジン + ターボ付きが主流。
このトレンドの中で、ゼロ発進時のトルク確保と燃費向上の目的から、AT/オートマチック・トランスミッションの多段化が進行中です。
MTの多段化には限度があり、BMWや7MTを採用するポルシェを除き、高級車や高級スポーツカーからMTが消えつつあります。
メルセデスが採用しているATと7速DCTは熟成が進み、特に近年、DCTの完成度が高まりつつあります。
2017年現在、メルセデスのAクラスをドライブすると、7速DCTはATと比べて遜色無いレベルまでブラッシュアップされています。DCTの変速は一瞬で完了するため、非常にスポーティーな印象を受けます。
今後、欧州車のトランスミッションは多段式ATとDCTが二大潮流のような印象を受けます。
なお、CVTは日本専用のドメスティックなトランスミッションとして、今後も日本車に採用が続くと思われます。
ATのメンテナンス、ATF交換
日本車の場合、ATF、通称、オートマオイルの交換時期は自動車メーカーによって異なります。
とあるトヨタ車の取扱説明書によると、100,000km毎のATF交換が推奨されています。要は、車の買い替えまでATFは無交換でOKとも読み取れます。
一方、メルセデスのATF交換はディーラーや専門の整備工場で要相談といったところでしょう。
メルセデス・ベンツのATF交換は不要?必要?
では、メルセデス・ベンツのATFは定期交換が必要なのでしょうか?
これは、オーナーのメルセデスに対する考え方次第だと思います。
数年で自動車を乗り換えていくのであれば、ATF交換は不要かもしれません。また、ATF交換は不要と考えるオーナーもいることでしょう。
なお、管理人的には、メルセデスに長く乗る予定であれば、ATFの定期交換は必要だと考えます。
YouTube動画 of 輸入外車の整備工場
整備工場の中には、定期的なATF交換が必須という方針の工場もあります。
メルセデスのATF交換は当然、DIYでは不可。メルセデス専用のテスターが無い整備工場でもATF交換は不可。
メルセデス・ベンツのATF交換は専用のテスターが必須であり、専門的なノウハウが必要です。
信頼できる整備工場でATF交換を実施したいものです。
頻繁な発進と停止の繰り返し in Japan
かねてより、メルセデスのATは発進と停止を頻繁に繰り返す日本の道路事情が得意ではないと囁かれてきました。そもそも、欧州車はアウトバーンに代表される高速巡行を前提に作られています。
ATは車速が上昇するにつれてシフトアップしていきます。
そして、赤信号や一時停止の度に減速しながら、ATは1段ずつシフトダウンしていきます。市街地走行において、多段式の「7速AT」や「9速AT」ほど、忙しくシフトアップとダウンを繰り返しています。
日本は欧州やアメリカとは道路交通環境が異なり、とかく信号機だらけ。日本の道路交通行政はCO2削減の時代に逆行するかたちで、やたらと信号機で車両を止める道路網を作ってきました。
車両が頻繁に発進と停止を繰り返す日本国内において、欧州車のトランスミッションは相応のストレスを受けていると考えて間違いありません。
それだけ、欧州車のATFの負担は大きいのです。
もし、メルセデスのATに不具合が発生したら・・・考えたくありませんが、高額な出費が待ち構えています。;;
この世に劣化しない油脂は存在しません。
特に、メルセデスのATF交換の時期に決まりは無いようです。
ちなみに、管理人は今まで予防整備の観点から、ヤナセで約40,000km毎にATF交換を実施してきました。
それが功を奏したのか、W202 Cクラスの「5速AT」に機械的なトラブルは一切発生しませんでした。(ATをコントロールする電子基板は故障しました。^^;)
メルセデス・ベンツのATFが無交換の場合
ATF交換を実施する前に注意点があります。
・新車から約60,000km以上、ATFが無交換の場合
・走行距離が伸びている中古車でATF交換の履歴が不明な場合
この「約60,000km」という距離は厳密なものではありません。要は、走行距離が伸びているという意味。
上記の場合、ディーラーや専門の整備工場で要相談です。
今まで、ATFが無交換のまま走行距離が伸びている車両の場合、ATF交換が引き金になり、ミッショントラブルを引き起こす可能性がゼロではありません。これは「寝た子を起こす」とも言われます。
ATF交換時、AT内部の「アリの巣」のようなバルブボディに付着しているスラッジ等の汚れが剥離してAT内部に回り、ミッショントラブルを引き起こす可能性がゼロではありません。
ATは何とも繊細なトランスミッションと言えます。
長い間、ATFが交換されていない車両の場合、ATF交換の実施は慎重さが必要でしょう。
奥歯に物が挟まったような管理人の呟きながら、ATF交換は、今までのATF交換履歴や走行距離によってはリスクがゼロではありません。
今まで60,000km以上、70,000km、80,000kmとATFが無交換の車両であれば、ATF交換はリスクがある前提でオーナーの自己責任で判断することになるでしょう。
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