日本車からドイツ車、イタリア車、フランス車、アメ車まで世界の自動車の共通点として、アクセルペダルは運転席の足元の一番右側に装着されています。
これは、当然。
右ハンドルであれ左ハンドルであれ、乗用車やトラックのアクセルペダルは運転席足元の一番右側に装着されています。
ところが、ドライバーが車の運転席に乗り込んで、アクセルペダルが「オルガン式ペダル」なのか「吊り下げ式ペダル」なのか意識することは少ないのではないでしょうか?
このアクセルペダルの形式の違いは小さいようで、実は無視できない違いがあります。
吊り下げ式アクセルペダルとオルガン式アクセルペダル
吊り下げ式アクセルペダル
多くの日本車や世界的な大衆車に採用されているアクセルペダルは「吊り下げ式ペダル」↑。
吊り下げ式ペダルは、アクセルペダルの根元の部分がダッシュボードの奥から吊り下がっているように見える構造です。
吊り下げ式アクセルペダルが動く支点は上部、ダッシュボードの奥にあります。アクセルペダルがストロークする軌跡は上図のとおり。
そして、ドライバーがフロアに右足のかかとを乗せてアクセルペダルを踏み込むと、足の軌跡は上図のとおり。
上図で、アクセルペダルがストロークする軌跡とドライバーがかかとを支点にしてペダルを踏み込む軌跡が一致しません。
2つの軌跡が逆方向でずれています。
「じゃ、どうなるの?」となります。
ドライバーがかかとを支点にしてペダルを踏み込もうとすると、靴の裏とアクセルペダルの間に摩擦力が発生します。よって、アクセルペダルが動きにくくなってしまいます。
車種によっては、シートを正しいドライビングポジションにセットし、適切な場所に右足のヒールを置くと、つま先がアクセルペダル周辺のパーツに引っかかってしまう場合もあります。これでは、適切なアクセル操作ができません。
そこで、多くのドライバーは足全体を奧に押し込む、踏みつけるようにアクセルペダルを操作するしかありません。
これが理由となり、吊り下げ式ペダル採用車の中には微妙なアクセル操作がやりにくく、同時にアクセルコントロールが雑になりやすくなってしまう車種が存在します。
車種によっては、ミリ単位の繊細なアクセルコントロールがやりにくいのです。
また、吊り下げ式ペダルの中にはペダルのストロークが短いため、微妙なアクセルコントロールがやりにくい車両もあります。
以上が吊り下げ式アクセルペダルの問題点と言えます。
もちろん、吊り下げ式ペダル採用車であっても、アクセルコントロールに問題が無いようにきちんと設計されている車種も存在します。
正しいシートポジション設定
ここで、管理人は自動車教習所を思い出しました。
自動車教習所で学ぶ事の1つとして、ドライバーが車の運転席に乗り込んだら、まずシートポジションを適切に合わせる必要があります。
「あー昔、やったな~」
なんて声が聞こえてきそうですけど、ドライバーのシートポジションの調整はホント、大切。
シート座面調整
人それぞれ身長が違い、座高の高さと脚の長さも違います。
ドライバーが運転席に座り、まず右足でブレーキペダルを強く踏みます。その時、膝が軽く曲がっているのがベスト。これで、いざという時、思いっきり「ガツーン」とブレーキペダルを踏むことができます。
そして、MT車の場合、左足で確実にクラッチペダルを奥まで踏み込めるようにシートの前後位置を調整します。
次に、右足のかかとをフロアの適切な場所に置き、確実にアクセル操作ができる事を確認します。
車種によってはシート座面の高さや角度も調整できます。これにより、よりドライバーの体型や好みに合わせて微調整ができます。
シートバック角度調整
シートのバックレストを調整しながら、両肩をシートに密着させます。両手でステアリングホイールの最上部を握り、両腕が突っ張らないように調整します。
(ルームミラーとドアミラーも同時に調整します。)
シート屋さんのRECARO/レカロの動画はさすが。
管理人は自動車教習所を卒業し、運転免許証を取得してから相当の年数が経過しています。随分、昔の事のため、記憶が薄れているところもあります。
管理人の過去の記憶を手繰り寄せながら思い起こしてみますと、改めて、シートポジションを適切にセットし、ブレーキペダル、アクセルペダル、(クラッチペダル)の操作が確実であることがドライビングの第一歩であるのは間違いありません。
同時に、ステアリングコラムのチルトとテレスコピック機構が搭載されている車種の場合、ステアリングの位置を上下、前後に調整し、シートバックを調整します。
オルガン式アクセルペダル
メルセデス・ベンツやBMW、アウディ、ポルシェ等の欧州車、そして日本車の一部やマツダはオルガン式アクセルペダルを採用しています。
上の写真のようにオルガン式ペダルは上下に長い形状が特徴で、フロアに取り付けられています。
アクセルペダルがストロークする軌跡は上図のとおり。
そして、ドライバーはフロアに右足のかかとを乗せてアクセルペダルを踏み込むと、足の軌跡は上図のとおり。
アクセルペダルがストロークする軌跡とドライバーがかかとを支点にしてペダルを踏み込む軌跡がほぼ一致しています。
上図は意図的にルーズな運転をイメージしています。
ドライバーが右足のかかとをアクセルペダルに近い場所にきちんと置くと、アクセルペダルがストロークする軌跡とドライバーがペダルを踏み込む軌跡が一致するようになります。
このオルガン式アクセルペダルの場合、ドライバーがかかとを支点にしてペダルを踏み込む時、靴の裏とアクセルペダルの間にズレが生じるような摩擦力が発生しません。
よって、オルガン式アクセルペダルはスムーズなアクセル操作を可能とします。よって、ミリ単位の繊細なアクセルコントロールが可能になります。
アクセル操作がスムーズであれば、微妙なアクセルコントロールがやりやすく、燃費にもプラスの効果があると考えていいと思います。
更に、長距離走行時、オルガン式であればドライバーの右足が疲れにくいメリットもあります。
高級車やショーファードリブンカーならば、オルガン式アクセルペダルの採用が当然と言えます。
フライ・バイ・ワイヤ
古い話ながら、1990年代あたりまでの自動車はアクセルペダルとエンジン側のスロットルバルブがアクセルワイヤーで繋がっていました。
2,000年頃からフライ・バイ・ワイヤ(FBW : Fly by wire)技術が拡大し、電子制御スロットルを採用する自動車が増加しました。
これは、スロットル・バイ・ワイヤ(TBW : Throttle by wire)やドライブ・バイ・ワイヤ(DBW : Drive by wire)とも呼ばれます。
今や、アクセルペダルはECUと繋がっているセンサーでありスイッチ。よく考えてみれば、これは恐ろしくも感じます。自動車の電子制御化が加速してきたこともあり、アクセルペダルはスイッチ扱い。
かつて、アクセルワイヤーの取り回しやペダルコストの問題があったと思われます。しかし、今となってはオルガン式アクセルペダルを採用しやすくなっているのかもしれません。
マツダはラインアップのほとんどの車種にオルガン式アクセルペダルを採用しています。ドライバーのアクセル操作をきちんと考えたら、オルガン式アクセルペダルが優位。
自動車選びの際、アクセルペダルが「吊り下げ式ペダル」なのか「オルガン式ペダル」なのかチェックしてみるのも興味深いと思います。
コメント
この記事中のメルセデス車内映像。アクセルペダルに黄色くマーキングしてあるが、その左にブラ下がったブレーキペダルを見てごらんなさい。
物理のお勉強をもっともらしく語ったようだが、軌道のズレはごくわずか。
ほとんどのドライバーがその違いやストレスを感じないまま運転しているのです。
ひたすらに製造コストが最優先されるんです。
メルセデスが優秀なワケでもなく、、
コメント誠にありがとうございます。
市販車のアクセルペダルとブレーキペダルのストローク量には違いがあります。通常の市街地走行において、次のような傾向があります。
アクセルペダルのストローク量>ブレーキペダルのストローク量
概して、軽自動車のような非力なNAエンジンを搭載する車両ほど、アクセルペダルのストローク量が多くなります。
そして、ブレーキペダルのストローク量でブレーキを効かせる車種もあれば、ブレーキペダルの踏力に比例してブレーキを効かせる車種もあります。
オルガン式アクセルペダルのストローク量はブレーキペダルのストローク量より長く、オルガン式は微妙なアクセルコントロールがやりやすい特長があります。
近年、レンタカーとカーシェアリング会社は魅力的な欧州車を取り揃えています。ご興味がございましたら、オルガン式アクセルペダル採用車で長距離ドライブすることで、その採用理由がご理解いただけるのではと思います。
こんにちは。
他の記事にもお話が出ていた、元日産GT-R開発責任者の水野和敏さんは、踵に対して踏み込む動作をした時に、オルガンペダルだと靴底とペダルのズレが発生する事等を理由に、R35型の日産GT-Rは吊り下げ式を用いて開発されました。
その辺りもお調べ頂けると面白いかと思います。