2020年2月、我が家のCクラスC200(W204)が4回目の車検を迎えました。
W204の納車から年数は経過しているものの、年間走行距離が非常に少なく、トラブルは皆無。ボディとシャーシ、足回りのガタピシ感は微塵もありません。
そして今回、ディーラーから代車として、メルセデス・ベンツCクラスC220d AMGライン(W205)エアサス仕様のクリーンディーゼル・ターボエンジン車をお借りしました。
それでは、熟成の域に達したC220d AMGライン/W205エアサス仕様車の試乗レビューをお届けします。
完成の域に達したC220d/W205(エアサス仕様)
メルセデス・ベンツC220d
AMGライン(W205) | |
全長(mm) | 4,705 |
全幅(mm) | 1,810 |
全高(mm) | 1,430 |
車両重量(kg) | 1,690 |
ホイールベース(mm) | 2,840 |
最小回転半径(m) | 5.2 |
エンジン | 軽油
654型 1,949cc DOHC 直列4気筒 ターボチャージャー付 |
内径×行程(mm) | 82.0×92.3 |
圧縮比 | 15.5 |
最高出力(PS/rpm) | 194/3,800 |
最大トルク(kg・m/rpm) | 40.8/1,600-2,800 |
変速機 | 9速AT |
駆動方式 | FR |
サスペンション | F: 4リンク
R: マルチリンク (エアサス仕様車) |
タイヤ(前後) | (純正)
BRIDGESTONE POTENZA S001 F:225/45R18 95Y R:245/40R18 97Y |
ブレーキ | F: Vディスク
R: ディスク |
JC08モード燃費(km/l) | 18.9 |
燃料タンク容量(L) | 66 |
※アイドリングストップ機能、電動パワーステアリング、筒内直接噴射、コモンレール高圧噴射
C220d/W205のエクステリア
アートしているインテリア/C220d,W205
ほとんどPC&グランツーリスモの世界
近年の高級車は各種機能が満載。まともにスイッチを付けたら、インパネがスイッチだらけになってしまいます。
よって、カーナビ、オーディオ、ラジオ、エンターテイメント、車両設定等は全てモニター画面で操作し、機能を選択&設定できるUI。
管理人のようにWindowsの経験が長く、PlayStationTMのグランツーリスモ愛好家であれば、このようなUIに違和感を抱くことはありません。
他方、PCやスマホ世代ではないオーナーはC220dに慣れるまで少々、時間が必要では?と余分な心配をしてしまうほど機能満載。
ダッシュボードの一等地に鎮座する高解像度モニターは非常に美しいの一言。車両設定の画面は、ほとんどグランツーリスモの世界。
エアサスの恩恵は絶大
ディーラーでお借りしたC220d/W205のボディーカラーはダークシルバー。洗車したばかりとおぼしき代車は美しく輝いていました。
アップデートされたドア閉じ音
ディーラーの女性担当者が代車まで案内してくれて、簡単な車両説明。
管理人はC220dに乗り込み、ドアを閉じると、以前のW205とは異なるドア閉じ音が室内に響きました。
2018年2月に試乗したガソリン直噴ターボ、C200/W205のドア閉じ音はアルミ的な軽い音がしました。(W205のドアパネルはアルミ製)対する、C220dのドア閉じ音は、より低い音が響きます。
そして、エンジンスタート。
ステアリングコラム右側のセレクトレバーをDドライブに入れて、ブレーキペダルをリリース。この時、サイドブレーキ(パーキングブレーキ)は自動的に解除。
ステアリングホイールのグリップがやや太めで握りやすく、上質な革が手のひらに吸い付いてきます。
50mほど走行し、ややエンジン音がキャビンに入ってくるため、その時に初めて、代車はクリーンディーゼルエンジン搭載車であることに気付いたのです。
フラットライドのお手本
C220dは18インチAMGホイール&低偏平タイヤ仕様。それにもかかわらず、妙に乗り心地が良く、管理人は不思議な感覚に包まれていました。
一般的にバネサスペンションに18インチタイヤを履くと、多かれ少なかれ、ゴツゴツ感がシートに伝わってくる傾向があります。
もちろん、乗り心地の体感センサーは人それぞれ。
ところが、C220dからゴツゴツ感がほとんど伝わってこないのです。C220dのモード設定をComfortにすれば、ゴツゴツ感はほぼ皆無。
前回、ディーラーでお借りしたガソリン直噴ターボエンジンのC200/W205はランフラットタイヤ仕様でした。走行中、タイヤがマンホールの頭を踏むと、少々、強めの突き上げを感じた記憶が蘇ってきます。
それと比べて、C220dの乗り心地は素晴らしの一言。
何故だろう?
と不思議に思いながら家路についたのです。その乗り心地の良さの理由は、自宅に戻って判明しました。
C220dのフロント・ホイールハウスを覗くと、太いサスペンションが確認できます。(撮影した写真には写らず。)
これは、エアーサスペンション仕様車。
C220dには「ECO、Comfort、Sports、Sports+、Individual」の5種類のモードが用意されています。
各モードによって、ステアリングホイールの操舵力と操舵フィーリングが変わり、ダンパーの減衰特性が変化します。
Individualは個人設定が可能なモード。オーナーの好みで設定できます。
Comfortモードで走行していると、2代目メルセデス・ベンツEクラス/W210を彷彿とさせるようなボディの落ち着きがあり、とろけるような乗り味。
その中に今っぽい、腰のあるショックアブソーバーのダンピングが効いています。
くどいながらも、「これで、18インチタイヤ?」と、驚きを隠せないのが正直なところ。
C220dで街乗りのお勧めは、Comfortモード。ワインディングロードや高速道路ではSportsモード、または、Sports+モードがお勧め。
計測器がはじき出す数値と、優秀なテストドライバーが感じ取る感性の領域のフィーリングを上手く融合させているのがC220dのエアサスと言っても過言ではないでしょう。
日本の高価格車の中で、C220dに匹敵する乗り味の車が存在するのでしょうか?管理人はC220dをドライブして、日本の高価格車のサスペンションの将来を杞憂したのです。
グイグイ曲がるハンドリング
W205のハンドリングは、ややクイックで非常に回頭性がいいのが特徴。
C220dはクリーンディーゼル・ターボエンジンを搭載するため、ガソリンエンジン車よりフロントが重め。
しかし、C220dはガソリン車のW205と同様、グイグイ曲がっていきます。
それでいて、カーブを曲がり終えつつ、直線道路に戻っていくシーンでは、電動パワステのステアリングホイールが意図的にN付近(センター)に戻ろうとする味付け。
Cクラス、W205はカーブと直線道路の両方が大好きなキャラクターなのです。
C220dのステアリングホイールのセルアライニングトルク(SAT)はメルセデスとしては、やや強め。今や、メルセデスも電動パワーステアリングがデフォルトのため、W205のようなステアリングフィールがトレンドなのでしょう。
ただ、ここで苦言を呈するならば、もう少し電動パワーステアリング特有の操舵感を減らすことができれば、更に操舵の上質感が上がると思います。
クリーンディーゼル・ターボエンジン
C220dの654型クリーンディーゼル・ターボエンジンはディーゼルらしく低速トルクが太く、街中では、9速AT/9G-TRONICが2,000rpm以下でテンポよくシフトアップしていきます。
メルセデス・ベンツのATはモデルチェンジを受ける度に変速スピードが高速化され、タコメーターの針が落下するような速度でシフトアップしていきます。
ブラッシュアップを重ねてきたATがまだまだ進化しているようです。
一時期、注目を集めたDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)に暗雲が立ち込めているような気配がします。
直列4気筒、DOHC 2.0Lクリーンディーゼル・ターボエンジンのレッドゾーンは5,250rpmあたりから。C220dのエンジンはディーゼルとしては、かなり高回転まで回るタイプ。
ゼロ発進や加速時、キャビンに若干のエンジン音が入ってくるものの、クルージング中のエンジン音はほとんど聞こえず。アイドリング中のエンジン音はディーゼルとしては、かなり静かな方だと思います。
C220dのクリーンディーゼル・ターボエンジンの最大トルクは40.8kg・m。ガソリンNAエンジンで同等のトルクを出力するためには、V型8気筒、4Lクラスのエンジンが必要。
クリーンディーゼル・ターボエンジンが1,600kg台後半の決して軽くはないボディをぐいぐいと前に押し出してくれます。Sportsモードに設定すれば、ディーゼルエンジンにしては、なかなかの速さ。
ちなみに、フロントクロスメンバーはアルミ製。
C220d/W205のタイヤサイズ
C220d AMGライン/W205のタイヤサイズは
・Front : 225/45R18 95Y
・Rear : 245/40R18 97Y
AMGホイールが装着されています。
18インチタイヤで偏平率が40や45となると、どうしてもタイヤのエンベロープ特性が低下します。
特に、荒れている路面や地方の峠道を走行すると、低偏平タイヤのコンタクトパッチ(接地面)が変化しやすく、断続的にグリップ力が抜け気味になる傾向があります。やや、低偏平タイヤ特有の神経質な顔を出すのです。
その瞬間、コーナーリング中においては電子制御が顔を出し、ブレーキパッドが個別のブレーキローターを軽く甘嚙みしてくれます。
ヨーレートセンサーが車体の動きをリアルタイムで監視し、コンピューターが各ブレーキパッドを個別に制御してくれます。
見た目重視で18インチタイヤを死守したいのであれば、ミシュランあたりを履くことでタイヤのグリップ力に粘りが出るでしょう。
ちなみに、ホイールスポークの奥に見えるのはドリルドローター。
マルチビームLEDヘッドライト
C220d/W205の前照灯はマルチビームLEDヘッドライト。
カタログによると、ヘッドライトユニットに84個のLEDが組み込まれ、ステレオマルチパーパスカメラがリアルタイムで前方の状況を検知。
夜間、対向車がいなくなると、自動的にハイビームに切り替わります。対向車が見えてくると、自動的にハイビームOFF、あるいは、右斜め前方の光のみカットされます。
更に、カーブに差し掛かると、自動的に光を照らす方向がコントロールされます。LEDヘッドライトユニットの各LED素子が個別にコントロールされているようです。
従来型HID/キセノンヘッドライトの場合、光軸が上下、左右に動く仕組みは存在していました。
対する、マルチビームLEDヘッドライトは更に、きめ細かく個別のLEDを動かして光軸をコントロール仕組み。
これは、ハロゲンランプから続いてきた長いヘッドライトの歴史の中で、地味ながら革新的な技術と言えます。
夜道を走行中、あたかも意志を持つ生物的なLEDヘッドライトのように感じるもので、暗い夜道を低く遠くまで明るく照らしてくれます。
削り出しドアヒンジ
最後に
今回の代車C220d AMGライン/W205に試乗して印象的だったのは、やはり、エアサスの乗り心地。そして、ハンドリングやボディの動き、ブレーキタッチを含めた総合的な乗り味。
かつて、エアサスペンションはメルセデスSクラスのアッパークラスに搭載されていた装備。それがEクラス、そして、Cクラスにも搭載され、Cクラスの商品性は大幅に高まりました。
3~5年ほどで車を買い替えていくオーナーであれば、エアサス搭載車に食指が動くかもしれません。
もちろん、メルセデスのエアサスは消耗部品。年間走行距離が多いオーナーや1台の車に長く乗るオーナーはコンベンショナルなバネサスペンション仕様が選択肢に入るかもしれません。
CクラスW205の日本発売は2014年。今までのCクラスのフルモデルチェンジサイクルは7年のため、次期CクラスのW206は2021年に日本で発売される見込みのようです。
[Spy video]メルセデス・ベンツCクラスW206
欧州車の多くはイヤーモデル制を取り入れているため、毎年のようにアップデートされています。
メルセデスはフルモデルチェンジ後、毎年のように確実に進化していくのが伝統。
メルセデスのフルモデルチェンジ直後と末期モデルを比較すると、大幅な進化を遂げているのが通例。あえて、メルセデスの末期モデルを狙うオーナーもいるようです。
2020年時点において、W205はモデル末期を迎え、今回の試乗でW205の完成度の高さがひしひしと伝わってきました。CクラスW205はDセグメントの中で、世界のベンチマーク的な存在。
本当、お腹いっぱいで、参りました。「あっぱれ」の一言。
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