メルセデス・ベンツ日本のオフィシャルサイトによりますと、ブルーテック/Blue TECディーゼルエンジンを選択できるモデルが増えつつあります。
ディーゼルエンジンは低速トルクが太くて燃費がいい、燃料費が安いメリットがあります。
他方、日本のお家芸であるハイブリットも低速域ではモーターがエンジンをサポートし、燃費がいいのは言うまでもありません。
ディーゼルとハイブリッドは毛色が違うパワープラントながら、両者の特長を比較してみましょう。
ラインアップにBlue TECディーゼルエンジンが増加中
2019年2月現在、メルセデス・ベンツのラインアップの中でブルーテック・ディーゼルエンジンを選択できるモデルは以下のとおり。
Cクラス
CLS
Eクラス
Sクラス
Gクラス
GLC
GLE(AMG以外はクリーンディーゼルエンジンのみ)
GLS
Vクラス(クリーンディーゼルエンジンのみ)
GLEのエンジンはAMGを除いてクリーンディーゼルエンジンのみ。Vクラスはクリーンディーゼルエンジンのみ搭載しています。
もちろん、本国で製造されているメルセデス・ベンツのラインアップとメルセデス・ベンツ日本が輸入しているメルセデス・ベンツのラインアップには違いがあります。
各モデルのラインアップにクリーンディーゼルエンジンが加わっていることからも、今後のメルセデス・ベンツの方向性が垣間見えるような気がします。
日本では、マツダがクリーンディーゼルエンジンの開発に経営資源を投入してきました。日本市場ではハイブリッドのみならず、クリーンディーゼルエンジンに注目が集まり、クリーンディーゼルを支持するオーナーが随分と増えてきました。
進化途上のディーゼルエンジン
トラックやバス、建設機械、鉄道車両、船舶の世界では、昔からディーゼルエンジンの独擅場。
かねてより、ディーゼルエンジンはガソリンより伸びしろが残されていると言われてきました。
しかし、かつてのパッセンジャーカーの中で、ディーゼルエンジンを搭載したモデルは、ごく一部に限定されていました。
この理由として、ディーゼルエンジンが発生するエンジン音と振動、排気ガスの問題があったからです。日本では、未だディーゼルエンジンはうるさい、黒い排気ガスといったイメージがあるかもしれません。
ところが、近年のパッセンジャーカーに搭載されているディーゼルエンジンはクリーンディーゼルエンジンと呼ばれ、音と振動が低減され、排気ガスの問題が解決されたエンジンに仕上がっています。
NOxとPMはシーソーの関係
ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれている物質はCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)、PM(粒子状物質)。
これらの中で、NOx(ノックス)は光化学スモッグの原因とされ、PMは大雑把に煤(スス)。
シリンダーの中で軽油が高温で燃焼するほど、NOxが大量に発生します。逆に、燃焼温度を下げようとすると、PMが大量に発生してしまいます。
メルセデス・ベンツのクリーンディーゼルエンジンは燃料の燃焼温度を高く設定することで、PMの発生を減らしています。
ディーゼルモデルのメルセデス・ベンツはBlueTEC(ブルーテック)と呼ばれるディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置を搭載しています。この装置は排気ガスに尿素を噴射してアンモニアを生成し、その後、ガスが触媒を通ることでNOxが窒素と水に分解されます。
可能な限り、パワーとトルクを出していくのがメルセデス・ベンツのクリーンディーゼルエンジンの特徴です。
圧倒的な太い低速トルク
メルセデス・ベンツ日本のオフィシャルサイトにアクセスして、CクラスのC220d(ディーゼルエンジン搭載車)のスペックを確認してみます。
【メルセデス・ベンツCクラス C220d】
エンジン:DOHC直列4気筒ターボチャージャー付
排気量(cc):2,142
ボア×ストローク(mm):83.0×99.0
最高出力(PS/rpm(EEC)):170/3,000~4,200
最大トルク(kg・m/rpm(EEC)):40.8/1,400~2,800
圧縮比:16.2
メルセデス・ベンツのロングストローク、クリーンディーゼルエンジンは何と1,400回転から40.8kg・mのトルクを発生しています。
「40.8kg・m」は排気量4,000ccのV8ガソリンエンジンが出力するトルクと同等。
C220dで空いた高速道路を巡航すれば、20km/l以上の燃費を記録するでしょう。
高回転型エンジンと低回転型エンジン
高回転型エンジン
カーマガジンやWebメディアでは、今をもってしても、高回転までビュンビュン回るエンジンの称賛記事が散見されます。いわゆる「エンジンが高回転まで回って気持ちいい~」というコメント。
そもそもバイクの世界では、昔から高回転型エンジンが常識。極端な例として、
かつて、YAMAHA FZR250やHONDA CBR250には、超高回転型DOHC4気筒 250ccエンジンが搭載されていました。これらバイクのタコメーターのレッドゾーンは17,000~18,000rpmに設定されていました。
これは、F1エンジンのレベル。
このような超高回転型エンジンは少ない長所と数多い短所を合わせ持つ2面性があります。
超高回転型エンジンは高回転域で高い最高出力を発生する反面、低回転域ではパワーもトルクも痩せ細ります。高回転型エンジンはパワーを出せるものの、実用性に欠けてしまいます。
さすがに今となっては、行き過ぎた超高回転型エンジンは過去のバイク史に残る1ページとして影を潜めています。
低回転型エンジン
一方、ディーゼルエンジンはエンジンを回さなくても低速トルクが太く、ターボとの相性が良く燃費がいいため、市街地走行から高速道路の巡航に適しています。
ディーゼルは車重が重い車両との相性が良く、メルセデスのSUVにもマッチするエンジン。
ちなみに、都市間を結ぶハイウェイバスのタコメーターのレッドゾーンは2,300回転前後。観光バスを含めたバスのレッドゾーンはガソリンエンジンと比べて格段に低いのが特徴。
なお、ディーゼルエンジンのデメリットは高回転まで回せないため、Maxパワーを上げにくいところ。
Maxパワーはゼロヨン加速や最高速の性能を追及する上で必要となる性能。
一般公道を走行する自動車には、高回転型エンジンよりも中低速トルクが太い低回転型エンジンの方がマッチします。公道では低回転型エンジンの方が断然扱いやすく、ドライバビリティが高まります。
日本で軽油は余っている
2018年4月現在、日本国内のガソリンスタンドの平均的な燃料価格は次のとおりです。
【レギュラーガソリン】:133円/l
【ハイオクガソリン】:144円/l
【軽油】:110円/l
燃料価格は日々変動するものの、概ね、軽油価格はハイオクガソリンの約30%OFF。
歴史的に日本で使われる軽油は産業用の燃料ということもあり、税金面で優遇されています。また、日本では軽油が余っていることもあり、ガソリンより安価に供給されています。
ガソリンエンジン vs クリーンディーゼルエンジンの燃費
ここで、メルセデス・ベンツCクラス(W205)のガソリンとクリーンディーゼルエンジン車の燃費を比べてみましょう。
C200(W205)
メルセデス・ベンツCクラス C200、排気量2,000cc、直噴ターボエンジン(ガソリン)の平均的な燃費は、
市街地:10km/l 前後
高速道路:15km/l 前後
C220d(W205)
メルセデス・ベンツCクラス C220d、排気量2,200cc、ターボ付きクリーンディーゼルエンジンの平均的な燃費は、
市街地:15km/l 前後
高速道路:20km/l 前後
※ e燃費、みんカラの燃費報告を参照。
100km走行時の燃料消費量と燃料費
メルセデス・ベンツC200(W205)とC220d(W205)が100km走行した際の燃料消費量と燃料費をシミュレーションしてみましょう。
C200(W205)
100km×1/10km/l=10L(燃料消費量)
10L×134円/l(ハイオクガソリン)=1,340円(燃料費)
C220d(W205)
100km×1/15km/l=6.66L(燃料消費量)
6.66L×99円/l(軽油)=659円(燃料費)
(※)尿素水について
C220dに尿素水溶液を注入する必要があります。新車でメルセデスを購入後、3年間はメルセデスベンツ・ケアにより無料です。
尿素水の消費量は1,000kmあたり約1L。価格はベンツディーラーで約2,000円/10L。年間の走行距離が10,000kmの場合、尿素水の消費量は約10Lですから、年間費用は約2,000円。
ちなみに、参考までに30系TOYOTAプリウスの市街地燃費を20km/lとして計算してみましょう。
30系TOYOTAプリウス
100km×1/20km/l=5L(燃料消費量)
5L×124円/l(レギュラーガソリン)=620円(燃料費)
冬場のプリウスは燃費が落ちて、街乗りで18km/l前後。
以上は、大雑把な計算シミュレーションですから、実際の数値は多少、前後します。
シミュレーション結果
【1】メルセデス・ベンツC200(W205)ガソリン車から、C220d(W205)ディーゼル車に乗り換えると、ざっと燃料費が約半分になります。
【2】メルセデス・ベンツC220d(W205)ディーゼル車の燃料費は、30系TOYOTAプリウスのそれと比べて、それほど変わらないことになります。
シミュレーションの結果、
「燃費がいいクリーンディーゼルエンジン」+「安い軽油」のダブル効果で、燃料費が大幅に軽減されることが分かります。
もちろん、ディーゼルエンジンはコスト高のため、それが車両価格を押し上げています。
しかし、年間走行距離が多いオーナーやディーゼルエンジンのトルク感が好みであれば、クリーンディーゼルエンジン搭載車は魅力的な選択肢の一つと言えます。
PS
英国やフランス政府が2040年までに、ガソリンとディーゼル車の販売を禁止する方針を表明しています。両政府は、排気ガスの地球環境への影響に配慮し、電気自動車(EV)の普及を目指しているようです。
そして、中国もEV車の推進を表明し、メディアはEV関連でざわついています。
しかし、バッテリー性能の飛躍的な性能向上と耐久性の確保、充電時間の短縮化の見通しが立っていない2019年現在、政府の発表は、希望的観測に近い理想論のように聞こえるのは管理人だけでしょうか。
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