ショッピングモールやスーパーマーケットなどの駐車場において、特に女性ドライバーの据え切り操舵の運転が目に付きます。
運転に不慣れな女性ドライバーは懸命に駐車スペースに駐車しようとしていることもあり、据え切りし放題のシーンを見かけることがあります。
この据え切り操舵、通称、「据え切り」の問題点を考えてみたいと思います。
据え切り操舵
据え切り操舵(すえぎりそうだ)とは、車両が停車状態のまま、ステアリングを操作をすること。
死語?でもある「重ステ車」(パワーステアリング未装着車)が停車時、ドライバーがステアリングホイールを回そうとしても、ステアリングが重くて簡単には動きません。
そこで、ほんの少し自動車を前進、または後退させると、ステアリングホイールは一気に軽くなります。
バイクも同様、直列4気筒400ccクラスともなると、停車中のハンドルは重め。ところが、少しクラッチミートして前進するだけで、バイクのハンドルは一気に軽くなります。
これが素の自動車、乗り物の操舵系の特徴。
軽自動車でも電動パワーステアリングがデフォルトの時代。
ドライバーは停車中でも、楽々ステアリングホイールを回すことができます。これが理由となり、パワーステアリングがデフォルトになってから、据え切り操舵がポピュラー?な操作になったのでしょう。
今や一般ドライバーにとって、据え切りは無意識に行う操作かもしれません。自動車教習所では、据え切り操作はOKのようです。
ところが、昔の重ステ車にとって「据え切り」は禁忌的な操作。今となっても「据え切り」はあまり推奨されない操作ではないでしょうか。
そこで、据え切りの問題点を書き出してみます。
据え切り操舵の問題点
【1】据え切り操舵はタイヤの偏摩耗の原因
据え切り操舵を繰り返すと、フロントタイヤが偏摩耗しやすくなります。
据え切り操舵中のタイヤから、トレッド表面のゴムが無理矢理、路面上で捩じられている音が発生します。
タイヤの偏摩耗はアライメントの狂いやオーナーの運転の癖、タイヤの空気圧管理の不備だけではなく、意外と据え切りが原因の場合があります。
特にミニバン系のタイヤはアウターショルダー(トレッドの外側)が摩耗しやすい傾向があります。
ミニバンはボディ形状からして重心が高く、ボディのロールは致し方ないものの、据え切り操舵がタイヤの偏摩耗に追い打ちをかけているとも考えられます。
【2】据え切り操舵は、操舵系にとって拷問状態
ステアリングホイールを回すと、ステアリングコラムが回転し、ステアリングギヤBOX(ラック&ピニオン)が回転力を左右方向に伝達し、
ラックエンド
↓
タイロッド
↓
ナックルに力が伝わり、フロントタイヤが向きを変えます。
この時、電動パワーステアリング機構がアシストしてくれるため、ドライバーは何の苦労も無くステアリングを回すことができます。しかし、据え切り時、フロント各部に物凄い力が加わります。
車両重量が1.5トンのFRならば停車時、フロントタイヤ1本に約400kgの重量がかかっています。フロント左右で約800kg。停車状態でステアリングホイールを回す操作は操舵系にとって拷問状態と言えます。
【3】据え切り操舵は電力需要の増大の原因
EPAS(The Electric Power Assisted Steering/電動パワーアシストステアリング)の形式によっては、ステアリングホイールを回した時、瞬間的に60~80A(アンペア)以上の電流が流れるようです。
これは、JTEKTさんの電動パワーステアリングに関する論文。
電動パワーステアリング用補助電源システムの開発(PDF File)
論文によると、電動パワーステアリング搭載車の据え切り操舵の瞬間、Maxの消費電力はヘアドライヤーの電力消費に匹敵します。
エアコン、カーナビ、オーディオ、ヘッドライト、ワイパー等がONの状態で据え切り操舵すると、車内の電力需要は一気に高まります。更に、多くの車両はアイドリングストップが標準装備。
もう、12Vバッテリーではあっぷあっぷの状態。このような理由もあって、近年のメルセデス・ベンツは