自動車の年間走行距離が多く、険しい峠道や悪路の走行が多いならば、当然、車にとって過酷な使用環境。
自動車メーカーは、これらの使用環境を「シビアコンディション」と定義しています。
これは、常識的に理解できます。
ところが、自動車の短距離走行が多く、いわゆる「チョイ乗り」が多くてもシビアコンディションに該当します。
ここで今一度、シビアコンディションとはどういう意味なのか?情報を整理しておきたいと思います。
シビアコンディションの定義
ウィキペディアによると、シビアコンディションとは次のとおり。
■悪路(凸凹路、砂利道、雪道、未舗装路など)
(条件の目安)走行距離の30%以上が次の条件に該当する場合
・運転者が体に衝撃(突き上げ感)を感じる荒れた路面
・石を跳ね上げたり、わだち等により下廻りを当てたりする機会の多い路面
・ほこりの多い路面
■走行距離大
・自家用乗用車・・・年間走行距離20,000Km以上の場合
■山道・登降坂路
(条件の目安)走行距離の30%以上が次の条件に該当する場合
・登り下りの走行が多く、ブレーキの使用回数が多い場合
■短距離走行の繰り返し
(条件の目安)走行距離の30%以上が次の条件に該当する場合
・1回の走行距離が8km以下の場合
■高地走行が多い
(条件の目安)走行距離の30%が次の条件に該当する場合
・高度2,000m以上の高地の走行が多い場合
出典:ウィキペディア、 シビアコンディション
各自動車メーカーのシビアコンディションの定義に大きな違いはありません。
自動車のシビアコンディションの中で「短距離走行の繰り返し」に注目してみます。
条件の目安
条件の目安として、走行距離の「30%以上」が次の条件に該当する場合
・1回の走行距離が「8km以下」
とあります。
通勤距離が片道8km以下に該当する自動車は結構、多いのではないでしょうか?
他にも、買い物や家族の送迎等の場合、片道の走行距離が8km以下のチョイ乗りが多いと思います。
また、オーナーによっては、愛車に乗るのは週末だけというケースもあります。
Wikipediaによると、「東京23区内の車は、ほぼ全てシビアコンディションに該当するという意見もある。」とあります。
管理人は「ほぼ全て」という表現には疑問を抱くものの、東京を含む日本国内において、通勤や買い物などで片道8km以内の走行を繰り返している車両はかなりの数にのぼると考えられます。
オーナーによって自動車の使用環境に違いがあるものの、「短距離走行の繰り返し」に該当する車は結構、多いと思います。
特に、女性が運転する車は短距離走行の繰り返しが多いのではないでしょうか。
チョイ乗りや短距離走行が多い自動車の問題点
ちょい乗りが多い自動車や走行頻度が少ない自動車は、車への負担が小さいように思えます。ちょこっと運転するだけなので、走行距離も伸びません。
ところが、パワートレインにあまり熱が入らない車は別の意味で過酷と言えます。
エンジンオイルの劣化
ちょい乗りが多い自動車や走行頻度が少ない自動車の場合、エンジンに熱が入りにくく、エンジンオイルの油温が上がりにくくなります。
また、走行頻度が少ない自動車のオーナー中には、バッテリー上がり対策として、定期的にエンジンを始動し、5~10分ほどのアイドリングを繰り返すことでしょう。
以上のような使用環境では、エンジンオイルの劣化が進みやすくなります。
何故なら、自動車のコールドスタート時、ブローバイガスが多めに発生します。暖機中は空燃比がリッチで燃料が濃いめ。
ブローバイガスとは、シリンダー内で燃料が燃焼時、ピストンリングとシリンダーの隙間から高圧の未燃焼ガスが吹き抜けて、クランクケース内に流入する生ガスを意味します。
これが原因で、チョイ乗りが多い自動車のエンジンオイルはガソリン臭が漂います。これは、エンジンオイルのガソリン希釈(きしゃく)と呼ばれます。
エンジンオイルが燃料を含むことで粘度が低下し、劣化が進んでしまう現象。これは、エンジン内部のスラッジ発生の原因になります。
エンジンオイルの乳化
冬場、チョイ乗りを繰り返していると、エンジンオイルが「乳化」(にゅうか)する場合があります。
エンジンオイルのフィラーキャップ裏側に、白っぽいマヨネーズスラッジが付着することがあります。まさに、これ。▼
エンジンにあまり熱が入らない状態でエンジンOffを繰り返していると、エンジン内部で結露した水が原因でマヨネーズスラッジと呼ばれるオイルの乳化現象が発生することがあります。
チョイ乗りが多い軽自動車やアイドリングストップ搭載車でオイルの乳化が見られることがあります。
エンジンオイルの劣化対策
チョイ乗りが多いと、エンジンオイルの劣化が進みます。これは、早めのオイル交換で対策するしかありません。
一例として、エンジンオイルの交換サイクルが15,000km毎に指定されている車種がシビアコンディションに該当する場合、その半分の7,500km毎のオイル交換が推奨されているケースがあります。
目安として、走行5,000km以内にエンジンオイルを交換すれば安心です。
[関連記事]
マフラーの錆
チョイ乗りを繰り返しているとマフラー内部に水が溜まりやすく、特に、タイコ部分が錆びやすくなります。
タイコ部分とは、車体の最後部の下側に取り付けられている一斗缶に似ているBox形状の箱。タイコの目的は消音。
交差点の信号機が「青」に変わり、全車が一斉に加速し始めると、前車のマフラーから水がゴボゴボと排出されるシーンを見かける時があります。
特に冬場において、そのようなシーンを見かけます。そのような車はチョイ乗りが多いため、マフラー全体に熱が入らず、マフラー内部に水が溜まっている証拠です。
バッテリーの劣化
カーバッテリーは使用環境によって寿命が左右されます。
カーバッテリーはチョイ乗りが多い場合や走行頻度が少ないと、寿命が短くなる傾向があります。高性能バッテリーでも同様。
これは、車両の暗電流による放電とバッテリーの自己放電、そしてバッテリー補充電のアンバランスが原因です。
[関連記事]
AT内部の錆
寒暖差が大きい場所に車を駐車したままで走行頻度が少ないと、AT内部に錆が発生してオートマ故障の原因になることがあります。
外気温の低下によりAT内部が結露し、更に走行頻度が少ないため熱が入らず、内部パーツの錆が進行してまうことがあります。
まとめ
このように短距離走行のチョイ乗りが頻繁であると、エンジンオイルや各パーツの劣化が進みます。
対策として、自動車の使い方を考え直してみるのも1つの方法。
急用を除き、複数の用事を1回の走行で済ませるようにすれば、走行時間が長くなり、エンジンはもとよりトランスミッション、デフ、マフラーに熱が入ります。
エンジンオイルの劣化やAT内部の錆を予防するためには、1度エンジンを始動したら、せめて30分は走行してエンジンのみならず、ATやマフラーにも熱を入れることが大切であることが見えてきます。
[関連記事]